電気自動車のバッテリーを長持ちさせる方法をリチウムイオン電池の原理から調べてみた

EV(Electric Vehicle, 電気自動車)のリーフに乗り始めて約1年が経つのですが、最近「バッテリーの劣化(充電量の低下)って結局のところ、どういうことなの?」「リーフのバッテリーを復活(充電量を増加)させられる『回復走行』の噂があるけど、本当なの?」という疑問が沸々としたので、頑張って調べてみました。

調査結果としては「リチウムイオン電池の劣化の仕組みは様々で、劣化が早まる状況がいくつもあって、それを避けることで長持ちさせられる」「リチウムイオン電池は復活しない。回復走行の噂は都市伝説だった」でした。

以下に「長持ちさせる方法」「劣化の原因」「回復走行がなぜありえないのか」をまとめました。

EVのバッテリーを長持ちさせる方法まとめ

以下が、長持ちの方法のハウツーです。

バッテリーの温度を常温に保つ。

  • 駐車時に天日に晒さない。屋上の駐車場より屋内や、屋外でも屋根付きの駐車場。
  • 速度を抑えて走行する。高速でも走行車線で80km巡行。電費もよくなる。
  • 地下に潜るタイプの機械式駐車場は冬でも夏でも一定温度なのでEVに優しい。(人間にとっても、乗るときの車内温度がいつでも25度くらいなので快適)

SOC(State of charge, 充電率)を15%〜90%に保つ。

  • SOCを15%以下にしない。特に0%にしない。
  • SOCを100%にしたら、すぐに使う。
  • 自宅で普通充電ユーザーは100%にしがちになるので、なるべく避ける。

急速充電するときは、可能なら早めに切り上げる「ちょい足し充電」をする。

  • 急速30分1回よりも、急速15分、間に走行、また15分、のほうが長持ちする。

時間に余裕がある時は出力の低い急速充電器を使う。

  • ディーラーの充電器は44kw〜150kwで、コンビニや道の駅の急速充電器は20〜30kwなことが多い。
  • 普通充電できれば最も良い。(ただし100%で放置はよくない)

加速は緩やかにする。

  • 低いSOCの時は特に気をつける。

バッテリー劣化の原因まとめ

ここでいう劣化は、SOH(State of health, 出荷時の充電可能量を100%とした数値) の低下を指します。最大出力の低下は扱いません。劣化の原因ですが、誤解を承知でざっくりまとめました。

電池にひびがはいる。

  • 高温および急速充電ではバッテリーが正常であっても少し膨張します。その膨張速度が急激であればあるほど、大きなひびが入ります。(人間の目に見えないようなひびです)
  • 急速充電で膨張を伴わない場合でも、高電流が原因になることがあります。高出力(急加速)も原因になります。

金属が内部の電解液に溶け出す。

  • SOCが低すぎたり(0%に近い)、SOHが高すぎる(100%近い)とき、溶け出す量が急激に上がります。
  • 高電流、急加速も原因になりあす。

内部の接触面に異物が発生する。

  • バッテリーを使用していなくても、時間によって異物が発生します。SOCが100%だったり、高温状態のときは、これが顕著になります。
  • 急速充電でも多く発生する場合があります。

回復走行がなぜありえないのか

まず「回復走行」と呼ばれるものは、バッテリーを復活させるとされる特定の走り方のことをいいます。リーフの場合、Leaf Spy というアプリと、OBD端子に接続するデバイスとの組み合わせで確認できる「SOH」の数値の上昇をもって確認されています。これで得られるSOHは物理的な正確なものではなく、車両コンピューターが計算した推測値です。

結論としては回復走行の存在は都市伝説で、リーフに使われているリチウムイオン電池(一般的なもの)では、どんな放電をしようが充電をしようが、先に記述した劣化内容が元に戻ることはありません。

というわけで回復はありえませんが、劣化させにくくすることはできるので、無理のない範囲でやっていきましょうということでした。

以下情報ソースの紹介です。

情報ソース

今回の結論にあたって元にした情報源は以下の通りです。

1. バッテリー劣化の仕組みを科学的に説明した動画

Battery Degradation Scientifically Explained - EV Battery Tech Explained

この動画は日本語字幕がありますが、専門性が高く資料が英語でどの部分を話しているのかわかりにくいので、3〜4回ほど見直しました。

2. 電池メーカー情報、電池、電力関連の雑学

電池メーカー情報、電池、電力関連の雑学

「雑学」というほどざっくりしておらず、かなり専門的な知識が得られるサイトです。

3. SUPERサイエンス 世界を変える電池の科学 | Kindleストア

SUPERサイエンス 世界を変える電池の科学

書籍も1冊必要だろうということで買ってみましたが、化学式がバンバンでてくるので読み切るのは大変でした。世界最古の電池から実用化されていない最新の電池まで仕組みが解説されています。

4. 研究論文「HEV/EV 向けリチウムイオン電池の充電率とパラメータの同時推定」

HEV/EV 向けリチウムイオン電池の充電率とパラメータの同時推定

論文形式なので読むのがめちゃくちゃ大変で数式なんか1ミリもわかりませんが、3回くらい通し読みしたら「充電率(SOC)の推定ですら、めっちゃ大変」ということがわかりました。

こちらは国会図書館で複写申請ができます。郵送も可能です。

コメント / トラックバック

コメントは受け付けていません。