戦争における「人殺し」の心理学はスゴ本
デーヴ グロスマン Dave Grossman 安原 和見
筑摩書房 (2004/05)
売り上げランキング: 9,077
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売り上げランキング: 9,077
おすすめ度の平均:
戦争で人を殺すということ
すばらしい
戦争の悍しい実態を垣間見る思い。
戦争における「人殺し」の心理学が非常に興味深い内容でした。個人的にかなりスゴ本です。
内容をメモ的に箇条書きします。
- 人間もそれ以外の動物も、同種同士の殺し合いには共通点がある。異種であれば殺すことは容易いが、同種だと相手を殺すまで戦うことはめったにない。儀式的な戦いは人間には顕著にみられ、動物にも多く見られる。
- 同種を殺すことには何か強い抵抗感がある。
- 殺すよりも降伏を選ぶ。同種殺しは皆「したくない」ため、降伏しても「殺されない」可能性も十分に高い。
- 殺す前に威嚇する。
- 第二次世界大戦以前の兵士の発砲率はたったの2割で、8割方が発砲していないか発砲しても威嚇のみ。相互に威嚇し合っている構図があった。
- 「精神的戦闘犠牲者」の存在。殺したことの罪悪感によって精神を病むケースが非常に多い。比較して殺される恐怖による精神疾患は非常に少ない。
- 距離(物理的距離、心理的距離、だれがやったかわかるかどうか)があるほど殺しやすく、精神的戦闘犠牲者になる割合も少ない。
- ベトナム戦争以後発砲率は9割以上に急上昇した。
- 理由は訓練方法を変えただけ。兵士は簡単に発砲するように条件付けできる。
- あまりにも簡単に発砲(=人殺し)できるようになってしまうため、兵士は「俺はまるで人殺しが得意なのか」と困惑し、精神的戦闘犠牲者の深刻さは激増した。
- ベトナム戦争の兵士は国のために命をかけて戦ったのに、帰国したら非難轟々だった。そのせいで非常に深刻な心的外傷後ストレス障害を患った兵士が大量に発生した。
- ベトナム戦争の失敗でアメリカは学び、それ以後兵士のストレスをケアするために多大な努力を費やしている。
「人間、生きるか死ぬかの瀬戸際に立てば人殺しだってできる」という物言いはここでは通用しません。訓練をうけておらず自我を保った状態であれば「殺す」という選択肢は最後までいっても選ばれることはありません。「殺さずにいかに相手に諦めさせるか」に腐心し、「それでもだめなら自分が諦める」選択を取るのが人間だそうです。ただこれにまったくあてはまらない、天性的に人殺しの素質がある人間も数%存在するとのこと。
戦争映画好きなど戦争に興味がある方は必読の書だと思います。そうでなくても、一読をおすすめします。
デーヴ グロスマン Dave Grossman 安原 和見
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おすすめ度の平均:
戦争で人を殺すということ
すばらしい
戦争の悍しい実態を垣間見る思い。
なるほど・・