ロジカルシンキングのセミナーでとてもやるせなかった話
細かいことを言えば、これはずいぶんアバウトな問題である。「質問は一切受け付けません」というのは、ちと困る。
こちらを読んで思い出したことがある。とてもやるせなかったことなので、鮮明に思い出せるうちに記してみた。記すことで、同様の事態が減ってくれることも期待して。
なお、リンク先は読んでも読まなくても続きの文章を読むために支障はありません。
目次
ロジカルシンキングのセミナーに出席した
2年前くらいに「ロジカルシンキング(論理的思考力)」を身につけるためのセミナーに出たことがあった。セミナーは、200人くらい入れる会場で60人くらいが6人づつグループを作ってテーブルを囲み、講師がお題とキットを出して受講者がグループで話し合って考えて答えを出す、というセミナーだ。どこの何というセミナーかはもうわからない。
ロジカルシンキングはなんぞやというのは、僕からはよい説明はできないので、とりあえず今だけは「身につけばすげえ頭がよさそうな人になれる」ようなものと考えてほしい。(たぶん本当はぜんぜん違う)
セミナー時間は3時間くらいで、お題は2問だった。3問だったかもしれないけど、覚えているのは2問だ。どちらの問いも「一見すると限られた情報から、問題解決方法を導き出す」というものだ。
やるせない事態は1問目で起きた。
あるケーキ店の売り上げの落ち込みを解決せよ
1問目は「あるケーキ店の売り上げが落ちてる。原因を見つけ出し、売り上げを上げるためにはどうすればいいか」というものだった。受講者にはここ1年間の売上表と情報シートが、グループごとに配られた。情報シートはグループ全員同じではなく、グループの中では自分だけのシートになる。必然的に同じグループの受講者同士で情報を出し合う必要があり、グループ全員で最終的な結果を出すことになる。情報シート自体は見せてはいけなかったように思う。売上年表は全員同じものだ。月間売り上げは、1日から末日までの売り上げと考えてよいそうだ。
売上年表の期間は1年間で、4月から始まって3月で終わる表だったと思う。たしか、10月くらいからじょじょにひと月の売り上げが落ちていた。情報シートには、「10月に店内を改装した」とか「12月に原材料を変えた」とか書いてあった。
僕は「ふむふむなるほど、いかにも原因っぽい情報だけど実は関係ない情報も混ざったりしてて、おもしろいじゃん」と思って作業に取りかかった。
ケーキ店の売り上げについて考える
少なくともこのお題においては、ケーキ店は小売り商売である。大口注文などの例外もあるだろうけど、このお題の文脈からすると小売りだけを考慮する感じだ。ただ、気になるのは定休日や祝日など。僕の情報シートには書かれていない。誰かの情報シートに書かれていたりするのだろうか。講師への質問は許されているので、「定休日や祝日はありますか」と質問すると、それは考慮しなくてよいということだった。1日は1日で、それ以上でもそれ以下でもないということだ。
しかし月ごとの日数は違う。このことについて言及は無かった。僕は、これはひっかけだ、と思った。月ごとに合計が出ているが、1日あたりで見ないことには、正確な傾向が掴めないはずだ。日数は月ごとに違うのだから。
そこで、表の数字を全て30や31で割って追記した。難しいのは2月の扱いだ。2月はうるう年によって日数が変わる。(さらにいえば100年目と400年目でも変わる)この年は閏年なのかどうなのか。まあ、どっちであっても28日か29日であるから、他の月よりは少ない。ということは、月単位の売り上げは2月の場合、他の月より少なくても、実は1日あたりの売り上げは高いかもしれない。しかも2月は、年表の最後から2ヶ月目の月である。重要な月である。怪しい。
一日あたりの売り上げを調べてみると...
いかにも怪しいと思いながら計算してみると、ビンゴ、
しかし、2月で増えていることを考えると難しい。減ってから増えてまた減るのである。これじゃ単なる誤差や季節や次期ごとの移り変わりなんじゃないか、とさえ思えた。しかしそうだとするとセミナーの意味がない。仮にこの事実にたどり着くことが目的だったとしたら、ちょっとお粗末である。何かあるはずだ。
僕はこの事実をチームに伝え、かなり悩みつつも僕たちのチームはそれなりに答えを出した。
一日あたりの売り上げについて言及が無い!
そして答え合わせの時間がやってきた。講師が解説を始めた。...何かがおかしい。1日あたりの売り上げについて言及せずに解説が進められている。おかしい、おかしいぞ。小売業の売り上げは、1日差でかなり変わる。「2月は特に日数が少なく、1日~末日までの計算の場合、2月の売り上げは少なくなる」というのは、小売り業であれば当然考慮すべきだ。嫌な予感がする。
結局、「2月も普通に売り上げが減っている」ととれる文脈で解説が終了した。腑に落ちない。
講師の方に質問したら返答が無かった...
質問タイムはあったかどうかは忘れたけど、休憩タイムにで講師の方に個人的に質問してみた。「そもそも、2月の売り上げは1日あたりにすると前月より増えているのですが、これは考慮しなくていいのですか」という感じで聞いてみた。返答らしい返答は無かった。僕は、無視されたんだな、と思った。
無視されたので僕はもやもやしたまま休憩タイムを終え、次のお題が始まり、セミナーは終了した。
そもそも論は重要だと思うのです
もしかしたら僕は聞き逃していたのかもしれない。このお題では1日あたりの売り上げは考えなくてよいということを。しかし、ロジカルシンキングのセミナーで、相手は数字である。28日と31日とでは、約1割の差が出る。これを無視するのは乱暴すぎる気がする。
「そもそも、その前提は正しいのか」と考えてみることは、実際に問題に直面したときにはかなり重要だと思う。特に統計なんかは危なっかしくて、今回のような単純な月別売り上げの統計だけでも、考慮無しだと1割の差が出るのである。考慮せずに「2月の売り上げが減ってます!」なんて進言したら「28日しか無いんだから当然でしょ」と返されるのがオチである。まあ実際は祝日とか行楽シーズンとかいろいろあるから月ごとで考えるのではなく、四半期単位にしたり、前年度の同月と比較したりすべきである。
というわけで、もし同じ教材を使っている教室さんがありましたら、この点はぜひ考慮していただければと思います。
なんだかにやにやしてしまいました。
この話は誰かに聞いた事があるのですが、Webに載っているのは思いませんでした。研修講師の1人として留意しなければいけません。月日数や季節変動などの要因を避けるために移動合計や移動平均を用いることにしています。事例としてこのマズいケースワークにリンクを貼らせていただきました。
http://bitscorp.net/pc/?cat=18&paged=14
ご了解いただければ幸いです。 松茂 幹
どの月も同じ日数だと仮定する前提だと当然想像できますので、定休日や祝日同様、講師に質問すべきでしたねー。